やらなきゃいけないと分かっているのに、なぜかやる気が起こらない。「あと一回だけ!」のゲームがなかなかやめられない。
そうやって大事なことを先延ばしにした結果、締め切り直前になって大慌て。準備が足りないまま本番に臨むことになる。「こんなことは2度としない…」と心に誓いを立てるものの、気づけばまた同じことを繰り返している。そんな経験のある方も少なくないのではないだろうか。
今回は、「大事なことを先延ばししてしまう」そんな人たちの行動原理と、それに対する対策を書いた本「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」についてまとめていきたいと思う。
そもそも先延ばしとは
先延ばしとは「自分にとって好ましくない結果を招くと知りながら、自発的にものごとを延期すること」だという。「自分の首を絞めるのが分かっているのに」というところがポイントだ。
慎重に物事を進めることや、物事に優先順位をつけて行動すること、緊急事態に対応することなどは先延ばしではない。
いくら明日期限の仕事があったからといって、目の前で同僚や友人がぶっ倒れていたら仕事なんかやっている場合じゃないだろう。この時に明日期限の仕事を今やらないのは、先延ばしではないと言うことだ。
そう。どのタスクを先にやって、どのタスクを後回しにするかを「どう決めたか」が先延ばしになるかならないかの大きな違いなのである。それは自分の心が知っている。
先延ばしする人の3つのタイプ
先延ばしをしてしまう人には3つのパターンが存在するという。もちろん複合型も存在するだろう。ちなみに私は②と③の複合型。正直①を兼ね備えた時期もあったと思う。
みなさんはどのタイプだろうか?
①自信がなくて「どうせ失敗する」と決めつけてしまうタイプ
人間は、今までの経験や失敗を通じて「自分が何をやっても無駄なのだ」と学習してしまう場合がある。これを「学習性無力感」という。学習性無力感を抱いている人はものごとを早々に諦めてしまい、成績がよくなかったりしても「まあいいや」と思ってしまう。
成功するかどうかはやってみなければ分からない部分もあるのだが、ネガティブなイメージが先行していると実際に失敗する確率が上がるのは言うまでもないだろう。
こんな感じでモチベーションが全然上がらないので、先延ばしにしてしまう。
②課題が退屈でたまらないタイプ
目の前の課題が嫌いでならない(価値を見出せない)ので、やりたくなくなってしまうタイプ。不愉快なことは誰でも先延ばしにしたい。ちょっとした単純な課題のはずなのに、価値が分からないがゆえにとんでもない苦行に見える。こんな課題に対して集中力を保つのは至難の技であり、すぐに違うことに気が散ってしまい、目の前の課題を先延ばしにしてしまう。
③目の前の誘惑に勝てないタイプ
目の前に面白そうなものがあるとついつい飛びついてしまう。目の前の衝動に抗えない、衝動性の強い人がこのタイプである。衝動性の強い人は欲求が強く、警戒心と慎重さに欠け、将来のことを考えるのが苦手だ。先のぼんやりとしたご褒美よりも目の前の快楽の方が魅力的に写ってしまい、衝動に負けてしまうのだ。
どうやったら先延ばしは治るのか
さて、みなさんが一番知りたいのはここだろう。本書では先延ばしを克服する方法が13個も紹介されている。それを順に紹介していきたい。一覧はこちらだ。
- 成功の螺旋階段を登る
- 成功物語に触れたり、環境を変えてモチベーションを掻き立てる
- 理想と現実を対比して、何が足りないかを明確にする
- 失敗を計算に入れる
- 自分が先延ばし癖のある人間だと認識する
- ゲーム感覚でやる・目的を自分にとって重要なことに置き換える
- 意志エネルギーを賢く使う
- 生産的な先延ばしをする
- ゴールに向かって前進できたのであれば、自分にご褒美をあげる
- 情熱を燃やせる仕事をする
- 誘惑に負けない環境づくりをする
- 誘惑のイメージを悪くする、誘惑のきっかけになるものを取り除く
- ゴールを具体的に設定し、小さなゴールに分割する
順に紹介していこう。
1. 成功の螺旋階段を登る
人間は「頑張ればできそうだな!」という状態が一番モチベーションが上がる。「どうせやってもうまくできない」と考えているとすれば、仕事へのモチベーションが上がるわけがない。やりたくない仕事なのだから、手につけたいはずがない。
とすれば、「頑張ればできそうだな!」って思えるようにすればいい。そのために必要なのが「成功体験」だ。
「簡単に言うなよ…」という声が聞こえてきそうだ。
けど、成功体験を積むのは別に仕事じゃなくてもいい。気になっていた資格を取ったり、新しい趣味を始めてみたり、趣味のレベルを1つ高めてみたり。
大事なのは「今までできなかったこと」が「できるようになった」という変化を得ることだ。そして、その変化を自分で褒めてやること。自分が「頑張った!」「できるようになった!」と思っても、周りの人間が褒めてくれることなんてそうそうない。
頑張ったらギターを弾けるようになったのだから、そんな書類1枚作るのなんて大したことじゃない。
2. 成功物語に触れたり、環境を変えてモチベーションを掻き立てる
さて、次のグループAとB、どちらの方がモチベーションが上がるだろうか。
グループA
能力はあってそれなりの成果は上げているけど、「どうせそんなことやっても…」「そんなやり方じゃダメだから」というようなネガティブな言葉がよく出るグループ
グループB
足りない能力もあって失敗もするけど、「やったらできるじゃん!」「そのアイデア、ここがいいね!」というポジティブな言葉がよく出るグループ
当然、Bグループのメンバーの方がモチベーションが高いだろう。
物事に対する考え方には感染性がある。ネガティブな言葉ばかりが飛び交うグループでモチベーションが上がるわけがない。しかし、職場がAグループのような場所である方も少なくないだろう。
だから、映画や成功体験を綴った本などで自分の心を高めるのだ。いわゆる自己啓発というやつである。その他にも、ポジティブで諦めない考えを持つ人と積極的に話すのもよい。
そうしているうちに、自分も成功できる!という気持ちが湧き上がってくるだろう。
3. 理想と現実を対比して、何が足りないかを明確にする
前項を読んで、自己啓発で成功するなら苦労しないと思う方も多いだろう。実際、「自己啓発本を読みまくっているだけで何もできない人」「講演会やセミナーに参加しまくっているけど残念な人」というのは存在する。
彼らは成功した自分の姿をイメージして「自分にもできる!」というイメージだけで満足してしまい、モチベーションが空想の成功に吸い取られてしまうのだ。
大事なのは理想と現実の対比である。
まずは自分の理想を具体的に思い浮かべる。成功した自分の姿だ。次に、今の自分の状態を見つめ直し、理想の自分になるために何が足りないかを考える。
この上で、理想の自分になることに楽観的な気持ちでいられれば、目標達成に向けたモチベーションはぐんぐん湧いてくるだろう。
4. 失敗を計算に入れる
今までの生活態度を改めようとして、最初の挑戦で成功できる人は珍しい。だいたいは何回かの失敗を経て、成功にたどり着く。
「10kg痩せるつもりが、5kgしか痩せられなかった」「毎日筋トレをやっていたのに、2日間もサボってしまった」「毎週ブログを書いていたのに、今週はサボってしまった」こう思って嫌な気分になり、今まで続けていたことをやめてしまう方もいるのではないだろうか。しかし、絶対的な数量で言えば前進している。何度かチャレンジするうちに成功するだろう。
先延ばしの癖も同様である。先延ばしを金輪際しないのはなかなか難しい。そうではなく、今までよりちょっとだけ早く課題に取り掛かる。早く課題に取り掛かるケースを増やす。そうやってちょっとずつ前進していく。
いきなり100点を取ろうとするから失敗するのだ。30点が40点になれば、それは立派な成長だ。
5. 先延ばし癖を自覚する
重度の先延ばし癖がある人は、先延ばしの正当化に事欠かない。
「この動画だけ見たら始めよう、っと…10分の動画だし」「あと一戦だけゲームをやってから…1戦5分だから」と思って気づけば1時間が経っている…なんてこともしばしばあるのではないだろうか。
この落とし穴を避ける方法はたった1つ。「例外を認めないこと」である。
今やらずに目先の楽しいことに溺れたとすると、1時間後もきっと溺れたままだろう。そう、そしてそれはずっと続く。明日も、来週も、来年も、10年後も…
目の前の誘惑に負けてはならないのだ。先延ばし人間であることを正当化してはいけない。
6. ゲーム感覚・目的意識でモチベーションを上げる
誰でも面白くないことはやりたくないし、後回しにする傾向にある。退屈な仕事にモチベーションが湧くわけがない。
そんな退屈な課題を楽しくするためのコツが「ゲーム感覚でやること」や「目的を自分の大事なものに置き換えること」だ。
ゲーム感覚でやる
あまりにも簡単でやる気が出ないのであれば、この方法が有効だ。自分でレベルに合わせて課題を難しくしてしまえばいい。今までの半分の時間でできないか?片手でできないか?
この手法はどんなところでも使えるのではないだろうか。例えばFPSゲームの練習。最初は的全身が標的だったけど、上半身だけにしてみる。頭だけにしてみる。そうやって簡単な作業を自分のレベルに合わせて難しくすることで張り合いが出てやる気が湧いてくる。
目的を自分の大事なことに置き換える
「何のためにやる仕事なのか分からない」という仕事の場合、得てしてモチベーションは湧いてこない。そんな時には自分の中で目的をすり替えてやればいい。例えば、退屈な仕事は自分の意志力を試すテストということにする。もしクリアできれば、自分が意志の強い人間であることを周りにアピールすることができるのだと位置付ける。ただの作業よりは面白くなるはずだ。
7. エネルギー戦略
体力同様、精神的なエネルギーも無尽蔵ではない。スタミナに限界があるように、モチベーションにも限界がある。
この配分を考えてやることが重要である。
朝型の人も夜型の人も、目が覚めてから3〜4時間後に最も脳が活性化するという。そのタイミングに合わせてさまざまな誘惑をシャットアウトできればぐんと仕事が捗る。
逆に目を覚ましてから時間が経つにつれ、どんどん知的能力は低下していく。残業をすればするほど、生産性は落ちていくのだ。しかも判断能力が低下しているが故に、そのことに自分自身では気づかないという悪循環…
限られたモチベーションはうまく割り振らなければならない。
8. 生産的に先延ばしする
課題の締め切りやテストが迫っているときに、部屋の片付けをしたくなることがあるだろう。これは生産的な先延ばしの一例である。
確かに課題やテスト勉強は進まないが、ほったらかしていた部屋は少し片付く。全くの時間の無駄ではないと言うことだ。
完璧主義にこだわって生産的な先延ばしをしないとすると、何もしないで時間だけが過ぎることになりかねない。
最重要課題ではなく、その他の課題を進めるという「生産的な先延ばし」をするのも1つの手だろう。そうすることで最重要課題に取り組む時に作業しやすい状態になる。
ただし、最重要課題が進んでいないことには注意。
9. ゴールに向かって前進できたら、自分にご褒美をあげる
我々が先延ばしをしてしまう理由の1つは、課題をやり遂げても自分にご褒美を与えないことだという。
確かにもったいなさ過ぎる。自分が何をすればモチベーションが上がるかは自分が一番知っている。
「この記事を書き上げたからアイスクリームを食べる」でも「5kg痩せたから焼肉を食べに行く」でもいいのだ。
ゴールに向かって多少なりとも前進したなら、それを自分自身で褒めてご褒美を与える。ご褒美が楽しみになって目の前の作業を楽しくできるようになる。これが良いサイクルを生むまでは課題に向かわせるための「賄賂」として、目の前にご褒美をぶら下げてやろう。
10. 情熱を傾けられる仕事をする
もちろん、そうできる状況だけでないことは確かである。
しかし、もし仕事を選べるのであれば、情熱を傾けられる仕事がそうでない仕事に比べて熱中できるというのは明らかである。
自分に合った仕事をするのだ。
11.誘惑に負けないように先に手を打つ
どうやっても誘惑に勝てない。そんな方もいるだろう。そんな場合には、先回りして誘惑に負けないような手立てを打つ必要がある。
1. 誘惑を手の届かない場所に追いやる
ついついお菓子を食べすぎてしまうのであれば、そもそもお菓子を買わない。買うにしてもコンビニで85g入りのポテチを買うのではなく、20g程度だけ入った小袋サイズを1つだけ買う。ファミリーパックは全部食べてしまう可能性があるので危険である。ソシャゲやSNSをやりすぎてしまうのであれば、アプリをアンインストールしてしまう。
2. 欲望が膨れ上がる前にコントロールする
空腹の状態だと暴飲暴食しやすいので、食事の最初に水1杯を飲んでサラダを食べることで物理的にお腹を満たしてからメインに手を付ける。遊びの予定を仕事の予定の前に決めておく。
3. ペナルティーを設ける
誘惑に負けた場合にお金を払うなどのルールを決めておくのは、多くのケースで有効。
12. 注意コントロール戦略
①誘惑を思い起こすものをできるだけ取り除く
机の上を整理整頓しておくことなどがこれにあたる。余地を与えなければ、邪念が入る確率は低くなるだろう。また、仕事や勉強をする場所と遊ぶ場所を明確に分けておくのも有効だ。部屋を分ける必要もなく、机を変えるだけでもいい。
②誘惑のイメージを悪くする
誘惑に負けそうになった時、ケーキを食べたくなったら砂糖と油の塊であると思うようにする。ソシャゲをやりたくなったらただの絵であると思うようにする。イメージを悪いものに置き換えることで誘惑に負けにくくするのだ。
③理想の行動のきっかけとなるものを代わりに置く
家族の写真をデスクに置くのはこれが理由だったりする。自分の家族を守るために、先延ばししてサボっている場合ではないだろう。モチベーションを上げられる標語などを貼るのも良いという。受験生が壁に「〇〇大学合格!」という紙を貼るのはちゃんと意味があるのだ。
13. ゴールを設定する
先延ばしをしないために最も効果的なのが、適切なゴールを設定することだ。
ちょっと頑張ればできそうな難易度で、自分にとって価値のあるゴールを設定できるなら、一気に面白い課題へと変身するだろう。
ゴール設定と達成のコツは3つ。
①具体的なゴール
ゴールは自分でよく分かる目標にしなければならない。「いつまでに」「何を」できるようにするのかが重要である。
いい例:1ヶ月間に3冊本を読んでまとめる
悪い例:本のまとめをできるようになる
②サブゴールを立てる
長期のゴールだと、なかなか最初のうちはモチベーションが上がらない。であれば、それを小さなゴールに区切るのがよいだろう。特にやる気が出ない時には、本当に小さなゴール設定にしてしまうのも手だ。
例:10日間で1冊本をまとめる→7日間で1冊本を読む→1日で1章読む
本当にやる気が出ない時の例:5分間だけ本を読む
③ゴールに向かっての行動を習慣化する
人間は習慣化してしまえば自動運転モードで行動を行うことができるようになる。それは目標にとっていいことでも、悪いことでも。
毎日帰宅後にYoutubeを見ることを習慣にしている人は、それより面白いものがあるかどうかに関わらず、帰宅後にはYoutubeをつけてしまう。筋トレを毎日夕食前にやっている人は、夕食前に無心で筋トレができるようになる。
良い習慣を規則正しく行えば、意志や誘惑に関わらず思考停止で良い習慣を続けることができる。
例:毎日夕食後に本を1時間読む
まとめ
今回は「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」の内容をまとめた。私自身も先延ばし癖に悩まされている1人であるが、この本のアドバイスを基になんとかこの記事を書き上げることに成功した。
この記事の内容が先延ばし癖のある人にとって少しでも助けになれば幸いである。
本書では、ここで紹介した先延ばし癖の診断テストを行うこともでき、より詳しい先延ばしの原因なども記載されている。
面白そうだと思った方は是非読んでみることをお勧めする。
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